審判なしでスポーツを自動判定する仕組み
株式会社revotは、SASSEN・Cyber KASSEN・Cyber Molkkyという3つのデジタルスポーツの判定システムを開発しました。センサーで検知し、その場で判定し、数百台に配る——この仕組みをどう成立させるのかを、実際に本番で動かした経験から解説します。同じ技術は製造・物流・安全管理にも転用できます。
このページに出てくる専門用語の意味は、開発用語集(36語)にまとめています。分からない言葉があってもご相談いただけます。
自動判定システムとは何ですか?
自動判定システムとは、センサーで検知した信号をもとに、審判を介さずに有効・無効や得点を機械が判定する仕組みです。設計の核心は「取りこぼさないこと」と「誤検知しないこと」の境界を、競技として成立する位置に置くことです。株式会社revotはSASSEN・Cyber KASSEN・Cyber Molkkyの3つの自動判定システムを開発しました。
なぜ「審判なしで判定する」のは難しいのか
スポーツの勝敗を機械で判定する——言葉にすると単純ですが、実際に成立させるには次の4つを同時に満たす必要があります。どれか1つでも欠けると競技として使えません。
| 条件 | 満たせないとどうなるか |
|---|---|
| 取りこぼさない | 有効打なのに反応しない。選手の信頼を一度で失う |
| 誤検知しない | 当たっていないのに反応する。試合が成立しない |
| すぐ出る(低遅延) | 結果が数秒遅れるだけで、競技のテンポが壊れる |
| 同じ条件なら同じ結果 | 再現しない判定は、記録としても競技としても使えない |
特に難しいのは1番目と2番目が相反することです。反応しやすくすれば誤検知が増え、厳しくすれば取りこぼす。この境界をどこに引くかが、判定システム開発の中心的な仕事になります。「センサーを付ける」ことが仕事なのではなく、この線引きを競技として成立する場所に置くことが仕事です。
株式会社revotが作った3つの自動判定システム
株式会社revotは、SASSEN・Cyber KASSEN・Cyber Molkkyという3つのデジタルスポーツの判定システムを開発しました。それぞれ「判定すべきもの」が違うため、設計上の難所も異なります。
SASSEN(サッセン)— 打突の有効・無効を判定する
センサーを内蔵したLEDソード(刀型の競技用具)で打ち合い、審判を置かずにスマートフォン1台で勝敗を判定します。
ここでの難所は「有効な打突」と「かすり・接触・自分の体に当たった」を分けることです。物理的にはどちらも衝撃であり、閾値だけでは分離できません。競技として妥当な線引きを、実際の試合データを見ながら詰めていく工程が中心になります。競技運営は一般社団法人全日本サッセン協会が行っています。
最大人数
2日間の体験者数(のべ)
体験者数
Cyber KASSEN(サイバーカッセン)— 数百人分を同時に判定する
参加者が装着するウェアラブル端末、独自Wi-Fiによる多端末のリアルタイム同期、自動スコアリングまでを一貫して開発しました。
ここでの難所は規模です。1対1なら成立する仕組みが、数百台になると通信が詰まって破綻します。1試合で最大100人が同時に対戦し、イベント全体では2日間でのべ673名が体験しています。この規模を実際のイベント本番で動かすには、通信量そのものを減らす設計(端末側で判定を完結させ、結果だけを送る等)が要ります。
Cyber Molkky(サイバーモルック)— 得点計算と記録を自動化する
北欧発祥のスポーツ「モルック」を電子計測でスポーツ化した競技システムです。倒れたピンを検出して得点計算と記録を自動化し、大会運営の負荷を下げます。関連技術についてPCT(特許協力条約)に基づく国際特許出願を行っています。
ここでの難所は屋外の環境変化です。日照、風、地面の状態が毎回違う中で、同じ判定を返し続ける必要があります。
センサーを付けることが仕事なのではありません。
「どこからを有効とするか」の線を、競技として成立する場所に置くことが仕事です。
自動判定システムの構成要素
競技が違っても、システムの骨格はおおむね共通です。受託開発でご相談いただく際も、この5層に分けて要件を整理します。
1. 検知する(センサー+機構)
何を物理量として捉えるか。加速度なのか、接触なのか、位置なのか。ここで取れないものは、後段でどれだけ処理しても取れません。最も設計が効く層です。
2. 判定する(端末上の処理)
取った信号から「有効かどうか」を決めます。サーバーに送ってから判定すると遅延と通信量が問題になるため、端末側で判定を完結させるのが基本です。
3. 伝える(無線通信)
判定結果を他の端末・スコアボード・運営端末へ届けます。台数が増えるほど設計難度が上がる層で、Cyber KASSENの1試合100人同時対戦はここの作り込みで成立しています。
4. 見せる(表示・UI)
選手・観客・運営がそれぞれ必要な情報を、必要なタイミングで見られるようにします。運営側は「操作を覚えなくても使える」ことが要件になります。
5. 残す(記録・分析)
試合結果を記録し、ランキングや戦績として使える形にします。ここまで作って初めて「競技」として運用できます。
この技術はスポーツ以外にも使えます
「センサーで検知し、その場で判定し、多数の端末に配る」という構造は、スポーツ固有のものではありません。次のような産業用途にそのまま転用できます。
| 用途 | 同じ技術で解決できること |
|---|---|
| 製造・物流の動作記録 | 作業者の動作を検知し、手順どおりか判定して記録する |
| 安全管理 | 危険動作・転倒・立入りを検知し、その場で警告する |
| 大規模イベントの運営 | 数百人の位置・状態を同時に把握し、運営端末に集約する |
| 研修・訓練の評価 | 実技の成否を自動判定し、記録として残す |
| 設備の分散センシング | 多数のセンサーから異常だけを拾い上げて通知する |
スポーツテックで求められる「取りこぼさない・誤検知しない・すぐ出る・再現する」は、産業用途でもそのまま要件になります。数百人規模の本番イベントで動かした経験は、そのまま産業案件の裏付けになります。
開発を依頼するときに決めること
- 何を「有効」とするか:ここが決まらないと何も作れません。曖昧な場合は、試作でデータを取りながら一緒に定義します
- 同時に何台動かすか:1台と数百台では設計思想が変わります
- どこで使うか:屋内か屋外か、電源はあるか、Wi-Fiは使えるか
- 誰が運営するか:専門スタッフか、その場の担当者か
- 何台作るか:試作数台か、量産数百台か
費用はスポーツテック機器で500万〜2,000万円、期間6〜12か月が目安です(開発費用と期間の目安)。まずPoCで「検知できるか」だけを100万〜300万円で確かめてから本開発に進むこともできます。