技術ノート/ウェアラブル・多数同時接続

100台のウェアラブル端末を同時に動かす実装の勘所

株式会社revot(筑波大学発ベンチャー)/2026-08-28

ウェアラブル端末を1台だけ作るのは、実はそれほど難しくありません。難所は「多数を、同時に、リアルタイムに」動かすところに現れます。台数が増えると電波が詰まり、時刻がずれ、データを取りこぼす——ここで多くの案件がつまずきます。当社は1試合で100人が同時に対戦するウェアラブル競技システムを実際に開発しており、この最難関をどう乗り越えたかを書きます。

ウェアラブル端末開発(ウェアラブルデバイス開発)で最も難しいのは1台の試作ではなく、多数の端末を同時にリアルタイムで動かすことです。台数が増えると、BLEでは電波が混雑して接続が詰まり、端末ごとに時刻がずれて順序が狂い、データを取りこぼします。株式会社revot(筑波大学発ベンチャー)は、参加者がウェアラブル端末を装着して1試合で最大100人が同時に対戦する競技システム「Cyber KASSEN」を開発し、学校・企業研修・自治体イベントで実運用しています。この案件の要件(台数・遅延・双方向性)ではBLEが適合せず、独自の2.4GHz無線設計を採用しました。適合するかは要件次第で、BLEが常に不可というわけではありません。試作は150万円から、100台規模のリアルタイム同期は800万〜2,000万円が目安です。

ウェアラブル端末開発の本当の難所は「1台」ではない

ウェアラブル端末を1台だけ作るのは、実はそれほど難しくありません。センサーを載せ、BLEでスマホに繋ぐところまでは、既存の開発ボードでも到達できます。難所は、それを「同時にたくさん、リアルタイムに」動かすところに現れます。

1台なら数十〜100台を同時に動かすと
無線BLEでそのまま繋がる電波が混雑し、接続が詰まる・切れる
同期気にしなくてよい端末ごとに時刻がずれ、順序が狂う
電池大きくすればよい装着性のため小さく、かつ長時間もたせる必要がある
集計1台分を見るだけ全端末のデータを取りこぼさず束ねる

「1台の試作は動いたのに、量産・多数展開でつまずく」——これがウェアラブル開発で最も多い失敗です。当社はこの「多数を同時に」を実際に成立させた実績があります。

実績:1試合で100人が同時に対戦するウェアラブル

当社が開発した集団競技システム「Cyber KASSEN(サイバーカッセン)」は、参加者がウェアラブル端末を装着し、1試合で最大100人が同時に対戦します。これは「多数の装着端末を、遅延なく、取りこぼさず束ねる」という、ウェアラブル開発の最難関をそのまま製品化したものです。

  • 100台規模の同時接続:一斉に電波を出しても詰まらない無線設計
  • リアルタイムの判定:誰が誰に当たったかを、その場で判定して表示
  • 取りこぼさない集計:全端末のイベントを欠落なく記録

学校の体育の授業、企業研修、自治体のイベントで実際に運用されています。研究室のデモではなく、実際の現場で動いています。

「100人同時」の条件:1試合あたりの参加者数の上限を指します。全参加者がウェアラブル端末を装着し、打突イベントを取りこぼさず記録・判定して、その場で表示するまでを含みます。会場は屋内体育館を想定しています。実際に必要な台数・遅延・通信環境は用途によって変わるため、ご相談時に要件を確認したうえで方式を選定します。

装着型デバイス特有の、3つの制約

身につけて使う機器は、据え置きの機器とは別の制約がかかります。ここを最初に設計しないと、後から作り直しになります。

制約何が問題になるか設計での対処
サイズと重量大きい・重いと装着してもらえない基板・電池・筐体を最初から一体で設計する
電池のもち頻繁に充電が要ると現場で使えない通信の間引き、スリープ制御、低消費電力の無線方式
体の動きと汗・水激しい動きで外れる/汗で壊れる装着方法の設計、防水・防塵、耐衝撃

無線方式の選び方

「とりあえずBLE」で始めると、台数が増えたときに行き詰まります。用途によって選ぶべき方式が変わります。

方式向いている限界
BLE省電力。スマホ直結。台数が少なければ最有力同時接続数と帯域に上限があり、台数・遅延の要件次第で頭打ちになる
独自2.4GHz多数の同時接続・低遅延が要る競技・産業用途スマホと直結できない。基地局が要る
Wi-Fi大容量データ(映像等)消費電力が大きい。装着端末には重い
UWB位置測定を伴う用途コストと消費電力

Cyber KASSENでは、その案件の要件(同時台数・許容遅延・双方向通信)を満たせなかったため、BLEではなく独自の2.4GHz無線設計を採用しました。BLEが常に不適という意味ではなく、要件次第です。「何台を、どれだけの遅延で動かすか」を最初に決めることが、方式選定の出発点です。

健康・産業用途への応用

「多数の装着端末をリアルタイムに束ねる」技術は、競技以外にも応用できます。

  • 健康・バイタル計測:加速度・心拍などのセンサーを装着し、複数人分をまとめて記録・分析
  • 作業者の見守り:現場の作業者に装着し、転倒・異常な動きを検知して通知
  • スポーツの動作解析:選手に装着し、動きを数値で取得してフォームを分析
  • 入退・動線の把握:人や物に装着し、どこで何が起きたかを記録

いずれも「1台の精度」だけでなく「多数を同時に、取りこぼさず」が要件になる領域です。詳しくはセンサーデバイス開発ロボット・IoT開発もご覧ください。

検討時に先に決めておくこと

  • 何台を同時に動かすか――これで無線方式が決まります。最重要です
  • どれだけの遅延が許されるか――リアルタイム性の要求水準
  • 何を測るか――加速度・圧力・心拍など、載せるセンサーが決まります
  • どこに装着するか――手首・胴・靴など。サイズと固定方法が変わります
  • 使用環境――屋外か屋内か、汗・水・衝撃の有無
  • 連続稼働時間――電池設計の前提になります

すべて決まっていなくて構いません。「何台を、どれくらいの速さで」だけでも決まれば、方式の当たりが付きます。

ウェアラブル端末の受託開発をご検討の方は、ウェアラブル端末開発の受託のページに対応範囲・進め方をまとめています。この記事は実装上の技術的な勘所を扱っています。

費用と期間の目安

範囲費用の目安期間
試作1台(BLE接続まで)150万〜400万円2〜4か月
複数台の同時接続対応400万〜1,000万円4〜8か月
数百台リアルタイム同期800万〜2,000万円6〜12か月
専用アプリ・集計システム込み600万〜1,500万円5〜10か月

補助金・奨励金を使うと実質負担は1/2〜1/3になります。制度の選定から申請、開発、実績報告まで、補助金・助成金のコンサルティング・サポートもrevotグループが全て行います。採択を保証するものではありません。