非GNSS(GPSが使えない場所)でドローンを自律飛行させる仕組み
GPSが届かない屋内・地下・橋梁下で、ドローンはどうやって自分の位置を知り、自律飛行するのか。「非GNSS(GNSS-free)」の基本の仕組みと、屋内点検・インフラ調査で導入を検討するときの着眼点を、開発の現場目線で整理します。
このページに出てくる専門用語の意味は、開発用語集(36語)にまとめています。分からない言葉があってもご相談いただけます。
GNSS(GPS)が使えない場所とは
ドローンの多くは、上空のGNSS衛星(GPS・みちびき等)からの電波で自分の位置を測りながら飛びます。ところが、次のような場所ではその電波が届かない、または大きく乱れます。
- 建物の屋内(工場・倉庫・体育館・プラント内部)
- 地下(トンネル・地下街・下水道・鉱山)
- 橋梁の裏側や高架下、鉄骨に囲まれた構造物の内部
- 高層ビルに挟まれた谷間(マルチパスで測位が暴れる)
こうした「GNSSが使えない環境」で自律飛行させる技術を、総称して非GNSS(GNSS-free)自律飛行と呼びます。設備点検やインフラ調査など、まさに人が入りにくい場所ほどGNSSが届かない、という現場のニーズがここにあります。
GPSの代わりに何で位置を知るのか
GNSSが使えないぶん、機体は自分が持つセンサーだけで位置と姿勢を推定します。中心になるのが次の技術です。
LiDAR / カメラによるSLAM
SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)は、周囲の形をセンサーで測りながら「地図づくり」と「自己位置推定」を同時に行う技術です。LiDAR(レーザーで距離を測るセンサー)が周囲の壁・柱・地面までの距離を毎秒何十万点も測り、その点群(point cloud)の変化から機体がどれだけ動いたかを逆算します。
IMU(慣性計測)との組み合わせ
加速度・角速度を測るIMUを併用し、LiDAR/カメラの推定と融合(センサーフュージョン)することで、一瞬の遮蔽や急な動きにも位置を見失いにくくします。
| 手法 | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| LiDAR-SLAM | 暗所でも動く/精度が高い | 特徴の乏しい長い通路が苦手 |
| Visual-SLAM(カメラ) | 軽量・安価 | 暗所・無地の壁に弱い |
| IMU単独 | 高速・遮蔽に強い | 時間とともに誤差が累積 |
重要なのは「どれか一つ」ではなく、環境に合わせて複数を組み合わせる設計です。現場が暗いのか、通路が長いのか、粉塵があるのか——条件によって最適な構成は変わります。
取得した点群は何に使えるのか
非GNSS飛行で得られる副産物が、精密な3次元点群です。これを処理すると、次のような成果物になります。
- 設備・構造物の三次元モデル(デジタルツイン)
- 変形・劣化・堆積の経時比較(前回計測との差分)
- 体積計算(土量・在庫山の体積など)
つまり「飛ばすこと」自体が目的ではなく、入りにくい空間のデータを取り、判断に使える形にすることが本当の価値です。
開発・導入で失敗しないための着眼点
1. まず「現場条件」を握る
明るさ・広さ・通路の長さ・粉塵・電波環境で、必要なセンサー構成も費用も大きく変わります。汎用の完成品ドローンをそのまま持ち込んでも、GNSSが無い現場では飛ばないことが多いのが実情です。
2. 「機体」と「データ処理」は別の技術
安定して飛ぶこと(制御・SLAM)と、取れた点群を使える成果物にすること(点群処理)は別分野です。両方を一貫して扱える体制かどうかを確認してください。
3. 小さく試してから広げる
いきなり本番規模で作らず、対象現場の一部でPoC(実証)を行い、精度と運用性を確かめてから拡張するのが安全です。
株式会社revotの取り組み
revotは筑波大学発のテクノロジーベンチャーとして、非GNSS環境での自律飛行とLiDAR点群処理を一貫して扱っています。GNSSに頼らない自己位置推定、点群の取得・処理・三次元復元まで、現場条件のヒアリングから設計・試作・運用までをご相談いただけます。設備点検・インフラ調査・災害対応など、人が入りにくい空間のデータ取得にご活用ください。
「GPSが使えない」と一口に言っても、状況は3種類あります
相談を受けるとき最初に切り分けるのが、どの状態なのかです。対処が全く違います。
| 状態 | 起きること | 対処 |
|---|---|---|
| 完全に届かない 屋内・トンネル・橋梁下 | そもそも測位できない | 外部の測位に頼らない自己位置推定が必須 |
| 断続的に切れる ビル間・谷・橋の側面 | 最も危険。復帰時に位置が飛び、機体が急に動く | 切れた瞬間の挙動を設計する。切れ替わりを滑らかにする |
| 誤差が大きい 反射の多い場所 | 測位はできるが数m〜十数mずれる | 他のセンサーと組み合わせて補正する |
実務で怖いのは2番目です。完全に届かない場所は「GPSは使えない」と分かって設計します。ところが断続的に切れる場所では、機体は「測位できている」と思い込んだまま誤った位置を信じます。ここで事故が起きます。切れた瞬間・戻った瞬間に何をするかを決めておくことが、非GNSS飛行の設計の中心です。
GPSの代わりに何を使うか
| 手段 | 向く場所 | 弱点 |
|---|---|---|
| LiDAR(レーザー測距) | 暗所・特徴の少ない場所 | 重い・高価。まっすぐで特徴のない通路は苦手 |
| カメラ(Visual SLAM) | 模様のある明るい場所 | 暗所・逆光・無地の壁で失う |
| 慣性センサー(IMU) | 短時間の補間 | 誤差が時間とともに積み上がる。単独では使えない |
| 気圧・超音波・ToF | 高度の維持 | 水平方向は分からない |
| UWB等の設置型 | あらかじめ機材を置ける屋内 | 現場ごとに設営が要る |
単独で成立する手段はありません。実際には複数を組み合わせ、状況ごとにどれを信用するかを切り替えます。この「切り替え」の設計が、非GNSS飛行の中身です。
飛ばす前に決めておくこと
- 見失ったときの挙動:その場でホバリングするのか、着陸するのか、来た経路を戻るのか。決めていないと、機体は予測できない動きをします
- 通信が切れたときの挙動:位置の喪失とは別問題です。両方を独立に決めます
- 人の上を飛ぶか:飛ばすなら、落ちても人に当たらない経路を先に設計します。プロペラガード、飛行禁止領域の設定
- 法令の確認:屋内は航空法の対象外ですが、屋外は飛行区域・機体登録・操縦者資格の確認が要ります。橋梁下は「屋外」です
- 撤収方法:機体が届かない場所で止まったとき、どう回収するか。ここを考えていない計画が実際にあります
当社はGPSが届かない場所を自律飛行する機体を自社で開発しています。市販機の設定を変えるのではなく、位置推定と制御そのものを実装しているため、現場ごとに「何を信用して飛ぶか」を作り込めます。
非GNSS自律飛行の開発 の費用と期間の目安
| 範囲 | 費用の目安 | 期間 |
|---|---|---|
| 屋内飛行の実証(PoC) | 150万〜400万円 | 2〜4か月 |
| 自己位置推定の実装 | 500万〜1,200万円 | 4〜8か月 |
| 機体込み一式 | 1,000万〜2,000万円 | 6〜12か月 |
補助金・奨励金を使うと実質負担は1/2〜1/3になります。制度の選定から申請、開発、実績報告まで、補助金・助成金のコンサルティング・サポートもrevotグループが全て行います。採択を保証するものではありません。詳しくは開発費用と期間の目安をご覧ください。