技術ノート/非GNSS・自己位置推定

GPSが使えない場所でドローンを飛ばす実装の勘所

株式会社revot(筑波大学発ベンチャー)/2026-08-28

「GPSの代わりに何を載せればいいですか」とよく聞かれます。結論から言うと、単独で代わりになるセンサーはありません。弱点の異なるものを組み合わせ、互いの穴を埋める設計になります。ここでは、実際に非GNSS環境で機体を飛ばして破綻した場面と、その対処を書きます。カタログには出てこない話です。

GNSSが使えない環境でドローンを自律飛行させるには、IMU単体では加速度の二重積分により位置誤差が時間の2乗で発散するため、必ず外部補正が要ります。実際の構成は、高速層(数百Hz)でIMUが姿勢と短時間の動きを取り、補正層(10〜20Hz)でLiDARのスキャンマッチングがドリフトを引き戻し、補助層で対地距離センサーと光学フローが独立に高度と速度を監視する三層構成です。センサーが2系統だと矛盾時にどちらが誤りか判断できないため、3系統以上で多数決できる状態を作ります。現場では、長い直線通路でLiDARが特徴を失い機体が前進し続ける、プロペラ後流で気圧高度が数m暴れる、粉塵をLiDARが障害物と誤認するといった破綻が起きます。株式会社revot(筑波大学発ベンチャー)はPoC 98万円から対応しています。

GPSが使えないと、ドローンは何を失うのか

屋外のドローンが安定して飛べるのは、GNSS(GPS等の衛星測位)が「自分が地球上のどこにいるか」を絶対座標で継続的に教えてくれるからです。これが無くなると、機体は次を一度に失います。

失うもの結果として起きること
絶対位置「戻る」「指定地点へ行く」ができない
対地速度ホバリングしているつもりで流される
ドリフト補正の基準誤差が時間とともに際限なく積み上がる
高度の絶対基準気圧高度計だけでは階層のある屋内で破綻する

ここで最も厄介なのは3番目です。IMU(慣性計測装置)だけで位置を出そうとすると、加速度の二重積分で誤差が時間の2乗で発散します。数秒でメートル級にずれるため、IMU単体は位置推定の手段になりません。非GNSS飛行の本質は「何で補正するか」の設計です。

GPS以外に使えるセンサーと、それぞれの限界

「GPSの代わりに何を載せるか」という質問をよく受けます。単独で代わりになるセンサーは存在せず、弱点が異なるものを組み合わせて互いの穴を埋めるのが実際の設計です。

センサー得られるもの限界・弱点
IMU(加速度・角速度)姿勢と短時間の動き。応答が最も速い位置は発散する。単独では使えない
LiDAR周囲形状。暗所でも使える長い直線通路・広い空間で特徴が消える/重量とコスト
ステレオ/単眼カメラ視覚的特徴点。軽量安価暗所・逆光・白い壁で破綻/単眼はスケール不定
下向き光学フロー対地速度。ホバリング安定に有効床が無地だと出ない/高度依存
距離センサー(ToF等)対地高度。安価で確実階段・段差で不連続に飛ぶ
気圧高度計相対高度ドアの開閉やプロペラ後流で数m動く
UWB等の測距ビーコン絶対位置に近い基準事前に設置が必要=現場が限定される

実際に効いた組み合わせ

当社が非GNSS環境の機体で採った基本構成は、「速いが発散するもの」と「遅いが絶対的なもの」を階層に分ける考え方です。

  • 高速層(数百Hz):IMU で姿勢と短時間の動きを取る。制御ループはここに追従させる
  • 補正層(10〜20Hz):LiDAR によるスキャンマッチングで、IMUが溜めたドリフトを引き戻す
  • 補助層:下向き距離センサーで対地高度を、光学フローで対地速度を独立に取り、片方が破綻しても検知できるようにする

重要なのは「多数決ができる状態」を作ることです。センサーが2つだと、値が食い違ったときにどちらが壊れているか判断できません。3系統あれば、外れた1つを切り離して飛行を継続できます。

現場で実際に破綻した場面

設計どおりに動かなかったケースを挙げます。これらは仕様書には出てこず、飛ばして初めて分かります。

破綻した場面何が起きたか対処
長い直線通路前後方向に特徴が無く、LiDARが「進んでいない」と誤認して機体が前進し続ける光学フローで対地速度を独立に監視し、矛盾したら減速
白い壁・ガラスカメラの特徴点が出ない/LiDARが透過して距離を取り違える視覚を主系にしない設計へ変更
プロペラ後流狭所で気流が壁に跳ね返り、気圧高度が数m単位で暴れる気圧は高度の主系から外し、参考値に降格
粉塵・水滴LiDARが手前の粒子を障害物として拾い、緊急停止を繰り返す単点の外れ値を時系列で除去してから使う
段差・階段対地距離が不連続に変化し、高度制御が急上昇を指令する不連続を検知したら高度目標を保持する

「非GNSS対応」と言うときの実際の到達段階

この言葉は幅が広く、どの段階を指しているかで難易度が桁違いに変わります。発注時はここを揃えないと認識がずれます。

段階できること難易度
1. 安定ホバリングその場に留まる。操縦は人低〜中
2. 手動飛行の補助壁への接近を止める、流れを抑える
3. 経路の自律飛行指定した経路を自分で辿る
4. 未知空間の自律探索地図が無い場所を自分で調べながら進む最高
5. 帰還保証異常時に自力で出口まで戻る最高

多くの案件で本当に必要なのは1〜3です。4・5を最初から求めると費用と期間が跳ね上がります。当社では、まず現場で1〜2を成立させ、そこで得たデータを見てから3へ進む段取りをお勧めしています。

検討時に先に決めておくべきこと

  • 飛ぶ場所の明るさ――暗所があるならカメラ主体の構成は選べません
  • 空間の形――長い直線通路や広い空間があるかで、補正手段の選定が変わります
  • 事前設置が可能か――UWBビーコンを置けるなら難易度が大きく下がります
  • 必要な精度――「数十cm」と「数cm」では構成もコストも別物です
  • 飛行時間――LiDARは重く、搭載すると飛行時間が削られます
  • 異常時にどうするか――その場で着陸してよいのか、戻る必要があるのか

これらが未定でも構いません。むしろ現場を1回飛ばすと大半が決まります。当社ではPoC(98万円〜/1〜3か月)で先に確かめてから本開発に入る進め方を標準にしています。

費用と期間の目安

範囲費用の目安期間
現場での飛行検証(PoC)98万〜400万円1〜3か月
自己位置推定の実装500万〜1,200万円4〜8か月
機体設計から一貫1,000万〜2,000万円6〜12か月

補助金・奨励金を使うと実質負担は1/2〜1/3になります。制度の選定から申請、開発、実績報告まで、補助金・助成金のコンサルティング・サポートもrevotグループが全て行います。採択を保証するものではありません。